2026-06-11

-ユン・ギョンウォン法務法人(有限)大輪弁護士 法律コラム
企業を運営する代表にとって、社員への信頼は組織を導く核心的な原動力だ。代表はこうした信頼をもとに実務者に業務を任せ、特に資金管理を専任する社員には財務に関する相当な権限を委任するものだ。しかし、こうした信頼が時として会社に取り返しのつかない致命的な被害となって返ってくることもある。最近発生する内部社員の横領事件を見ると、その手口は過去とは比較にならないほど緻密で専門的に進化している。たった一度の事故だけでも企業の存立自体が危うくなる状況に直面しうるようになったのだ。
過去の横領は、単に会社の金庫から現金を抜き取ったり、法人口座の金を自分の個人口座に振り込む一次元的な犯罪が主だった。しかし最近の横領は、発覚を避けるためにいくつもの段階を経る、いわゆる「マネーロンダリング」の形態を帯びる場合が多い。実際に筆者が代理して進めた事件の被疑者は、単に自分の口座に金を送ったのではない。会社に保管中だった代表取締役の個人の印鑑を無断で盗用し、代表名義の借名口座をひそかに開設したのだ。その後、法人資金をこの借名口座にまず振り込み、あたかも代表が正当に資金を引き出したかのような外観を装った。そしてこの資金を再び自分の知人の口座や、実際の取引のない架空取引先(ペーパーカンパニー)の口座へと少額に分割して送金する方式をとった。このように長期間にわたり緻密に計画された手口の前では、たいていの内部監査システムも役に立たなくなりがちだ。
上記の事例のように巧妙な段階を経て資金が隠匿された場合、犯行の事実を認識しても、被害規模を特定し容疑を立証することは非常に難しい作業だ。金融取引の内訳が複雑に絡み合い、犯行期間が長いほど証拠は徹底的に隠されているからだ。このとき事件解決の成否を分ける核心は、粘り強い資金追跡とデジタルフォレンジックだ。資金の流れを明らかにするときは、断片的に法人口座の出金内訳だけを見てはならない。法人口座に始まり、盗用された借名口座、そして最終目的地である架空取引先や知人の口座へと続く複雑な金融取引を一本の線で緻密につなげてこそ、横領の全体規模を把握できる。特に被疑者が犯行を隠すため会計帳簿を改ざんし、取引明細書を偽造した後、不利な証拠を削除する状況も発生しうる。したがって業務用PCなどに対する迅速なデジタルフォレンジックを通じて、隠匿・削除されたデータを復旧し、否認できない客観的な証拠を確保する過程が必ず並行されなければならない。
内部社員の横領の事実を認識したとき、裏切られた思いにとらわれて時間を浪費したり、軽率に感情的に被疑者を追及することは、かえって証拠隠滅の口実を与える毒になる。横領資金の回収は徹底した時間との戦いであるため、何よりゴールデンタイムを死守することが重要だ。被疑者が気づいて資金を完全に現金化して隠匿したり使い果たしてしまう前に素早く動かなければならない。犯行が疑われたら直ちに専門家の助力を受けて緻密に証拠を収集し、仮差押えなど迅速な保全処分と刑事告訴を同時に進めてこそ、奪われた会社の資産を少しでも多く取り戻せる。「うちの社員がそんなことをするはずがない」という式の安易な信頼は、企業リスク管理において最も致命的な弱点だ。事故が発生したなら、ためらうことなく法的対応のスピードを高め、企業の正当な権利と財産を徹底的に守り抜かなければならない。
イ・ドンオ記者(canon35@mt.co.kr)
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信頼していた社員の巧妙な横領、感情的な争いより「ゴールデンタイム」を死守すべき (リンク)
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